a10 (経済産業省 意見公募) 平成22年9月12日
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改定案に対する意見
意見公募内容につきましては下記URLリンクをご参照願います。
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http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595210025&Mode=0
<該当箇所>
該当箇所−1:1.越境取引に関する論点についての準則の改定案
【1】事業者間取引についての国際裁判管轄及び適用される法規
の項目の最後の部分(17頁)
該当箇所―2:上記と同じ場所に上記の追加記載提案に続けて(17頁)
(代案)今回の見直し部位とはなっていませんが、同準則の I-1-1 契約の成立時期 2.説明 項目の最後あるいは「ウェブ画面の場合」の節の前に、上記の1と2をセットにして記述する事も代案として提案します。
該当箇所―3:16頁(3)B i)ウィーン売買条約が適用される場合 の2節目
<意見内容>
該当箇所―1 に以下の節を追記する。
「なお、事業者間の紛争解決のために、本準則に記述された契約の成立時期や要件、契約履行の考え方に基づいて適正な裁定を受けるには、契約成立の成否についてであれば「読み取り可能な状態の申し込み承諾の通知がいつ到着したか」等に関わる、公平な第三者の証明が必要になると考えられる。従って上記の例であれば、公平な第三者としてのインターネットプロバイダー等と事前に打合せを行い、どの位の期間、到着情報がプロバイダーのデータベースに保存され、証明されうるのか等を把握し、場合によっては取引の当事者間で物理的な制約条件等も加味した合意をしておく必要がある。
ただし電子取引を、個別ではなく、国際ネットワーク、国際プラットフォームあるいは国際Single Windowを使用して行う場合は、関係者全員が承諾する事が前提条件となるこれらのサービス機関が設定する利用規約、伝送規定等により、上記のプロバイダー等との個別事前打合せや当事者間の合意等が代替される事が考えられる。」
該当箇所―2 に次の節を追記する。
「又、念のために補足するならば、事業者間の取引については、各国の国際私法に照らした適用法の下で有効な契約に関して、当事者間での合意等がある場合は、国際公序に違背しない範囲において、それらの合意等が優先され、契約成立の成否等についても、合意された条件があれば、それに基づいて裁定される。」
(ご確認)契約自体の有効性等に係る上記認識が正しいかご確認の上、ご検討下さい。
該当箇所―3 を次の通り修正する。 (修正の是非については提案理由に記載の観点をご参照願います。)
原文: 「・・・相手方が承諾の通知を発信する前に撤回の通知が相手方に到着する場合である。」
修正案: 「・・・相手方の承諾の通知が日本の事業者に到着する前に撤回の通知が相手方に到着する場合である。」
原文: 「・・・日本の事業者が承諾の通知を発信している場合・・・」
修正案: 「・・・日本の事業者の承諾通知が相手方に到着している場合・・・」
<提案理由>
[該当箇所―1および2 に関わる追加記述提案の「背景」]
準則の11頁(2)A の6節目には次のような説明が付されています。即ち「なお、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められ日本で勝訴判決を得たとしても・・・確定判決の執行を求める必要がある事には注意が必要である。」
この個所そのものには特段のコメントはございませんが、このような要領の、行き届いた説明あるいは注意の喚起をしておいた方が良さそうな点が、他にもあるかと思いますので提案させていただいた次第です。
(該当箇所―1 に関わる <提案理由>)
準則に沿った紛争解決のために必要となる第三者証明の取得に関わる事前準備
ウィーン売買条約が適用される場合でも、日本法が適用される場合でも、電子データの相手方への「到達」が契約成立の成否の基準となるというのが本準則の説明するところで、従って多くの場合双方のプロバイダーのデータ到着情報が公平な第三者情報すなわち契約が成立しているか否か等の判定基準になるかと思います。実際プロバイダーには信頼できる到着情報がどの程度の期間保存され証明可能なのか、到着情報と到着したデータの内容との突合証明をどう確保するか等は個々のケースに依って、出来る事出来ない事に違いがあり、一律に法的な規定をする事は困難と理解します。しかし、さはさり乍ら、少なくとも事業者間の越境取引では、当事者として準則の示すところに従って紛争に対応しようとした場合に、具体的に必要となる到着情報などの諸資料をどのように確保するかについて、予めプロバイダーと相談するなど、事前準備が必要と思います。また場合によっては相手方とも打合せ・合意が必要かと思います。当事者により見逃される可能性のある斯かる留意点につき、意見内容に記載したような趣旨の注意喚起が必要と思料する次第です。提案では同所に、国際ネットワーク、国際プラットフォームあるいは国際Single Windowを使用するケースについても付言しました。
(蛇足)
瑣末な表現上の事で恐縮ですが、準則 I-1-1条の1. (1) @ の表題は「承諾通知の受信者のメールサーバー中のメールボックスに記録された場合」となっております。直前(1)の記載事項を短縮したものだと理解できましたが、日本文として解りづらいので例えば「メールサーバー中の」を省く等の修正をされた方がよいかと思います。
(該当箇所―2 に関わる <提案理由>)
国際ネットワーク・プラットフォーム・Single Windowの規約との関連の整理
準則の対象がネットオークションのような個人取引から事業者間の輸出入電子取引までと極めて広いため、取扱いが難しい事は理解した上でのご検討のお願いです。
数年前からASEANでは、輸出入業務・手続に関わる電子プラットフォームや国内Single Windowを参加各国間で連携する事による、国境を越えた域内Single Window形成の計画が進められています。APECやUN-ESCAPでも同様のSingle Windowが構想されています。その他にも複数国に跨る、今少し私的な色彩をもったネットワーク等が組織されており、後述のPan Asian e-Commerece Alliance (PAA)もその一つです。
これらの組織では関係者を等しく拘束する詳細な利用規約・伝送規定等が設定されますが、これらの複数国に跨る電子貿易に関わる協定の規約類策定を円滑化し且つ標準化するためにUN/CEFACTは、本年8月11日にRecommendation No.35 “Establishing a legal framework for international trade Single Window” を公表しています。
法的枠組みに取り分け詳しくない貿易関係者から見ると、プロバイダーとのインターネット利用契約、ネットワークやSingle Windowの規約、準則により整理された適用法令・条約など多くの規範類が複雑に絡んだ状態に見え、特にそれぞれが規定する領域が重なっている部分では、どれが優先されるのかなど俄かには解りにくい状況となる事が懸念されます。一義的にはネットワーク、プラットフォームあるいはSingle Window側の規約において明示すべき事項ではありますが、どのように明示するかについて標準的な表現があるわけではありません。従って法律側として本準則において、上記の意見内容のような要領で一般的な解釈を付記する事により、混乱回避策を予め講じておいた方がよいのではないかと思料する次第です。
具体的な国際ネットワークの例を説明させていただきます。輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社(NACCS)殿は、上記PAAの日本代表メンバーとして活動されておられますが、PAAは主として東南アジア11カ国の電子通関・電子貿易のインフラを提供する、多くは実質半官半民の企業で構成されており、その機能提供のために約18の規約類による法的な枠組みが構築されております。因みにPAAにおける権利義務の移転も送達主義がとられております。また各国の法令とPAAの規約に抵触する部分が生じた時は可及的速やかにその事実をPAAに報告する事、及び、その為に一部PAA規約が無効あるいは執行不能となっても、PAA規約の他部分の有効性には影響が無い事が合意されており、本準則の記述するところと明らかに矛盾する点は無いように一見されます。
(該当箇所―3 に関わる <提案理由>)
「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」の第4条の趣旨から、電子データの授受は到達主義である事が明確になっており、改定案9頁冒頭の記述も例えば「・・・日本の事業者が承諾の通知を発信し、その承諾が外国の事業者に到達していれば・・・」等と、対にした表現となっています。
該当箇所として指摘させていただいた部分は、ウィーン売買条約ではどのように規定されているかについて説明されたものと思いますが、同条約ではこの部分だけ例外的に「発信主義」が取られているのかどうかが当方には定かではありません。この部分はまた、前頁(15頁)の事例に沿った記述で、同事例は「インターネット上で・・・」となっていますので、二つを繋ぎ合せると、電子取引でも発信のタイミングが問題になる事があると読みとれてしまうかと思料します。これが事実なら明確にその旨を説明しないと混乱を来すと思いますし、少なくとも電子取引については「到達主義」一本でいけるなら(ウィーン売買条約 第20条を援用すれば、即時の通信手段を使用した場合は発信ではなく到着を基準とさせることができるとのコンセプトがあるように理解できますので)、提案させて頂いた内容の表現に修正した方が紛らわしくなくよろしいかと思料する次第です。
了
(KW 2010.09.12)
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