JASTPRO 第3回 ITFCセミナー 要点メモ

JASTPRO:Japan Association for Simplification of International Trade Procedure = 日本貿易関係手続簡易化協会

ITFC: International e-Trade Facilitation Committee = 貿易手続国際連携推進委員会

開催日  2010年10月15日

会場   三菱商事株式会社 本社会議室

表題のセミナーに参加しました。電子貿易関係者には大変有意義な講演がなされましたので、本記事作成者が興味を惹かれた点を中心に簡単にメモします。詳細についてはITFCの事務局となっている日本貿易会 ( contact: jastpro.itfc@jftc.or.jp )にお問合わせされることをお勧めします。

AGENDA:

1 ITFCの活動報告 (報告者:三井委員長)

2 我が国のAEO相互承認の現状(講演者:財務省関税局 近田課長補佐)

3 第一回日中物流政策対話 出席報告(講演者:日本機械輸出組合 橋本氏)

4 港湾の競争力強化策 (講演者: 国交省港湾局 下司企画室長)

5 EUImport Control System (ICS) と 米国の24時間ルールや10+2制度との要件比較 (講演者: Mr. Lance Thompson CONEX

 

1 ITFCの活動報告 (報告者:三井委員長)

@ PAA (Pan Asian e-Commerce Alliance) の中国からのメンバーであるCIECCが主催し、中国のチンタオ(青島)で第35回PAA会議が開催された。PAAを利用した電子貿易の新規利用者の開拓が進められており、PAAのメンバー国以外にも門戸を開いて、マーケットの拡大が図られている。第36回会議は日本のメンバーであるNACCSが主催し、20101130日〜12月3日の間、横浜で開催される予定。

A Supply Chain Securityに付いては、AEO相互承認、米国10+2ルール、欧州のICSなど関して、次項以降の講演者の演題になっている。長年の懸案となっていた輸出手続における保税搬入原則の見直しが、2010618日閣議決定の新成長戦略に明記された。

2 我が国のAEO相互承認の現状(講演者:財務省関税局 近田課長補佐)

@ AEOを推進するにあたっては、貿易関係者が、AEOになることの利点をどのように評価するかが重要。国内の貿易関連手続簡易化で利点を提供することもさることながら、AEO設定各国が連携することにより利点の創出が可能となる。その一つがAEOの相互承認である。事業所所在地国でAEOとなることにより外国のAEOのステータスも同時に得られれば、大きな利点となりうる。

A 我が国のAEO相互承認の現状は、実施済み2カ国(米国、ニュージーランド)、署名済み2カ国・地域(カナダ、EU)、協議・研究中4カ国(中国、韓国、マレーシア、シンガポール)となっている。具体的な相互承認の利点の例として米国との間では、日本のAEO取得企業について、米国のC-TPATAEOに相当)に係る3年ごとのValidationが免除されている。

B 現在日本では全国9税関でAEOの認定が行われているが、AEO事業者認定に際しての評価の平準化のために、東京税関にAEOセンターが設置されている。

3 第一回日中物流政策対話 出席報告(講演者:日本機械輸出組合 橋本氏)

@ 2010624日北京にて開催された上記会議の日本側出席者は経産省、国交省、外務省の政府関係者の他、業界、学識経験者など70名、中国側は国家発展改革委員会など127名で、それぞれより両国の物流の現状と政策体系が披露された。

A 日本機械輸出組合から日中両国間のサプライチェーンに係る制度的課題として、法律運用の透明性確保、制度の簡素化・効率化、AEOの相互承認とAEO事業者への24時間ルールの適用除外についてプレゼンテーションが行われた。

4 港湾の競争力強化策 (講演者: 国交省港湾局 下司企画室長)

@ コンテナ船の大型化傾向が顕著で、2000年頃までは積載個数7000TEU必要水深16m位が最大で、日本でも対応できる港があったが、現在は既に最大14000TEU(必要水深18m)になっており、対応できない状態。これを反映してか、2000年以降、香港、シンガポール、上海、釜山には欧米基幹航路フルコンテナ船の寄港回数が増大しているのに対して、日本の各港はほぼ横ばいから減少傾向にある。

水深の問題はコンテナ船に限らずバルク船についても同様で、海外の主要港に比して、日本の港湾には能力に問題がある。

A 2010618日に閣議決定された新成長戦略の実現に向けて、更なる集中と選択を図る中で、「港湾経営主体」の設立による民間資本の注入、「民」の視点による戦略的港湾経営の導入を行うことにより、港湾関連の種々の課題の克服を目指す。

5 EUImport Control System (講演者: Mr. Lance Thompson CONEX

@ 20101231日に開始されるEUの貨物到着前安全保障申告は、ICS (Import Control System)と略称される。趣旨の共通性から米国のCSI (Container Security Initiative) ISF (Import Secutiry Filing)と同一視されることがあるが、実際は申請者の限定や必要要件およびEUの特性から来る運用要領などで、かなりの差異があることを認識する必要がある。

A 輸送貨物に係るデータには輸出者でなければ解らないものや、輸送業者が付与する情報などによって構成されており、従来から一元的にこれを把握する関係者は存在しない。従って米国の制度では取引関連の事業者と輸送関係の事業者から別々にそれぞれに関連したデータの送付を受けるが、ICSでは案件ごとにデータ申告代表者を選定し(実際にはCarrierになることが多いと思われる)、代表者が全てのデータを揃えて申告することになっている。またICSではパッケージ情報として分け得る最少単位の貨物明細の提出が求められる。

B ICSの申告データは原則として、最終向地の税関ではなく、例えそれが単なる給油のためのものであっても、当該輸送手段(船・航空機等)が最初に到着するEU域内の場所の税関に提出し、RISK ANALYSISを受けることになっている。ただし当該事業者がAEOである場合は、データが最終向地の税関に回され、そこでRISK ANALYSISを受けることがありえる。

C ICSの理念は確定しているが、以下のような状況に起因して、実行上の問題はこれからも出てくることが考えられる。EUといっても関税同盟、ビサなし通行協定(シェンゲン協定)、ユーロ通貨圏、それぞれにより加盟国に違いがあることからも解るように、統合のレベルに差が存在している。EU全体で27税関当局があり、適用する関税法の体系は同じでもVAT税率などの運用面では統一されていない。各国により税関システムの新旧に差があり、通信プロトコルやメッセージフォーマットにも違いがある。  了

(K.W./2010.10.16)   →和文Indexに戻る