a13 フレイトフォワーダーの日本及び世界における現状と問題点
2010年11月24日、JIFFA (Japan Freight Forwarders Association) 主催でJIFFA設立25周年記念国際シンポジウムが開催され、これに参加しました。フレイトフォワーダーというのは、自らは輸送手段を持たず、他の運送業者(船社・航空会社などのCarrier)に貨物を委託して、荷主に対して運送責任をもつ運送事業者(NVOCC=Non Vessel Operating Common Carrier)ですが、多くの場合、貨物のend to end一貫輸送や貿易手続関連諸業務および荷扱作業を含めたサプライチェーン全体に亘る複合物流サービスを提供します。同シンポジウムでは将来に亘ってのフォワーダーのあるべき姿等についての論議がなされました。それぞれの論者の立場・観点の違いから、統一見解が出された訳ではありませんが、筆者の理解による問題点の整理を含めて概要を記述します。
1 フォワーダーの国際輸送に占めるシェア(残は船社や航空会社の直接輸送契約)
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1980年 |
1997年 |
2007年 |
海上貨物 |
10% |
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35% |
航空貨物 |
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76% |
95% |
・上記は平均値だが地域や業種によってかなりの差がある。海上貨物についての現況は、欧州域内貿易では50%〜55%だが、他地域ではもう少し低い割合になっているところが多い。シンガポールでは45%〜50%となる。日本では、フォワーダー起用の割合が30%位のレベルで推移している中で、中国向けが伸びている。しかし他地域向けは伸び悩んでいる。また自動車や家電業界ではフォワーダーを起用しない船社や航空会社との直接契約が多く、NVOCCは20%位となっている。
・海上貨物においてフォワーダーが強い分野はLCL (Less than Container Load) の相積み貨物手配だが、荷主が自分の商品置場でコンテナ詰めまで完了させるようなFCL (Full Container Load) では、フォワーダーの提供する他の付加価値サービスを必要とするのでなければ、船社や航空会社と直接輸送契約する事が多くなるという傾向がみられる。日本においてはLCLの割合は漸減しており10%位の水準にある。
2 フォワーダーの進むべき方向
・例えばコンテナ海上輸送の場合で、輸出コンテナヤードから輸入コンテナヤードまでの国際輸送区間だけの見積料金を比較すれば、船社の船腹スペースを借受けてサービスするフォワーダーが、船社が直接荷主に提示する見積料金を下回る事は、当然のことながら困難である。即ちフォワーダーがその価値を発揮できるのは、小回りの効いた、荷主にとって便利なサービスを付加したトータルでの提案においてである。
・貿易の相手先が自社の海外事業所・代理店といった場合には、荷主が輸送区間の事情を熟知していることから、国際輸送部分のコストは安全で安定している限り安い方がよい事になる。しかしたとえこのようなケースであっても、各輸送ルートについて価格的にベストの一社だけに頼る事は回避したいという配慮もあり、フォワーダーからのプラスアルファのサービス提案が代替案として受け入れられる可能性がある。
(1)複合一貫輸送サービスに力点を置く
船積前、貨物の集積場・置場から港まで、荷揚後、港から貨物が利用される場所まで、トラックや鉄道あるいは内航船・国内便を使用して貨物のハンドリングを一貫して請負うサービス。この場合、フォワーダーが船社あるいは航空会社に支払う国際海上輸送・航空輸送の費用は、フォワーダーが荷主に提供するトータルサービスに係るコストの単なる一部という位置づけとなる。その上、サプライチェーンは向後ますます複雑化する傾向にあり、地域特性等に係る深い知識が必要となる場合では、荷主が直接貨物輸送全体をコントロールすることが難しくなる。従ってフォワーダーの提供する複合一貫輸送は荷主にとっても魅力のある提案となる。
(2)最適オプション提案
船や航空機といった運送手段を持たないことは、工場を持たないメーカーと同様の利点、即ち時とルートによって柔軟に最適の運送オプションを選択し、荷主に提案する可能性を持つことになる。しかし複数の船社や航空会社と取引関係を持ち、選択が可能な立場に立つためには、力関係の上でフォワーダーが充分な規模を持つことが必要である。欧米で進んでいるメガフォワーダー化は、フォワーダーや関連企業がM&Aを繰り返すことによって規模の優位性を追求するもので、上記の流れに沿ったものと言える。 了
(KW 2010/11/28) →Indexに戻る