A16 ラテンアメリカのアジアに対する高い関心 “Latin American Pacific Arch”
1 ラテンアメリカ太平洋岸諸国のアジア対応
昨今ラテンアメリカ諸国の間でアジア市場への注目が高まっています。特に世界経済の閉塞状態から抜け出すために、中国経済が果たす役割に対する期待は、太平洋を挟んだラテンアメリカにとっても大きなものがあります。
いきおいAPECが現在施行中の新規参入に対するモラトリアムを、期限の最終年となる本年に、解除するのか延長するのかにも多大の関心が寄せられています。以前からAPECへの参入を希望しているコロンビアは、今月7月初旬、本年のAPEC議長国となっている日本に商工観光大臣を派遣し、モラトリアムの終了とコロンビア参入へのサポートの働きかけをしたという経緯もあります。
しかしラテンアメリカのアジアに対する対応はAPECだけでなく、ラテンアメリカの太平洋岸諸国は、Latin American Pacific Arch (Arco del Pacifico Latino = 仮訳:環太平洋ラテンアメリカ同盟)を結成し、アジアとのBiregionalな関係の模索をしています。
2 Latin American Pacific Arch
ラテンアメリカには ALADI(ラテンアメリカ統合連合)、CAN(アンデス共同体)、MERCOSUR(南米南部共同市場)といった、いくつかの経済連合がありますが、ラテンアメリカの諸国は複数の連合に加入し、それぞれの連合の一員となることによる種々のシナジー効果を得る政策をとっています。Latin American Pacific Arch もその一つで、ラテンアメリカの太平洋に面した国で結成されています。加盟国は以下の11カ国となります。
Chile, Colombia, Costa Rica, Ecuador, El Salvador, Guatemala, Honduras, Mexico, Nicaragua, Panama, Peru
3 Latin American Pacific Arch における貿易手続電子化体制整備
今月7月6〜7日にパナマで開催されたLatin American Pacific Arch第6回 取引・インフラ・物流円滑化に関わる実務者会議には、1975年、ラ米20か国カリブ7か国で、域内の貿易の円滑化・活性化を目的として結成されたSELA (Sistema Economico Latinoamericano = ラテンアメリカ経済機構) が招聘され、情報担当役員 Dra.Saadia Sanchez Vegas により、「ラテンアメリカとカリブにおける貿易関連手続の電子化の展望」と題した SELA の基本研究の概要が講演されました。その中で、個別の電子化に関わる技術的な要件の他に、その枠組みとなる貿易関連行政手続の Single Window 体制の有効性が強調されました。
地理的に離れた複数の場所の間で行われるのが貿易取引で、その特性によるハードルを少しでも低くするためには、少なくとも電子化により手続き面における簡便性を高め、貿易の現場を支援することが貿易の円滑化のために肝要であるとの認識に立ったものです。
4 Single Window をベースとした貿易円滑化の推進
ラテンアメリカ諸国の中には既に国内の Single Window を構築した国も複数ありますが、その程度・規模には差があるのが現状です。SELA、ALADI、la CEPAL など南米における各種国際機関はこれまでも、関税縮減撤廃など「制度的な面」から域内の貿易活性化に積極的な役割を果たしてきましたが、「貿易関連行政手続の面」からも電子化を切り口としてラテンアメリカ諸国の国内Single Window構築を慫慂し、以って域内におけるRegional Single Window の実現を目指す動きにあります。
FTAの推進と貿易関連行政手続きの電子化・円滑化は、制度と手続という貿易活性化のための車の両輪の関係にあることが認識されています。FTAにより必要となる原産地証明に例をとると、輸出入両国で輸出者がSingle Windowで電子的に発行手続を行い、輸入者が輸入国のSingle Windowを使ってFTAをベースとした輸入通関を行うことで、円滑化を図るといった図式となります。
輸出入両国のSingle Window が Regional Single Window のような形で連携されていれば、両国間における電子的な確認作業など多くの面での効率化が実現でき、地域の貿易活性化に大きく寄与するとの考えです。
アジア諸国の間ではASEAN Single Windowのように、Regional Single Windowが既にかなり進展をみせており、ラテンアメリカでも同様のRegional Single Windowを構築して太平洋を挟んだ Pacific Rim として Bilateral Regional Agreement ができれば、一気に大きな経済圏が出来るとのシナリオも検討されているようです。
<KW> 2010.07.20