a17 国連アジア太平洋経済社会委員会の域内電子貿易促進支援――直近の動き
国際連合には総会、事務局、裁判所と安全保障、経済社会、信託統治の3理事会がありますが、その中の経済社会理事会にはヨーロッパ経済委員会(ECE)アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)西アジア経済社会委員会(ESCWA)ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)アフリカ経済委員会(ECA)の地域委員会があります。
1988年米国と欧州が採択することにより標準EDI(電子データ交換)仕様となったUN/EDIFACTを国際的に管理するUN/CEFACT(貿易簡易化と電子ビジネスのための国連センター)は上記ECEの中におかれています。
電子商取引に関わる法律のモデルを提案しているUNCITRAL(国際連合国際商取引法委員会)は国連加盟国の中から地域等に偏ることなく60カ国が国連総会の場で選定され6年の任期で法的枠組みの構築等にあたっています。
各地域委員会はそれぞれの担当地域の国際競争力の強化を目指し、その一環として積極的に貿易の電子化を進めております。日本が所属している地域委員会はアジア太平洋経済社会委員会(以降ESCAP)で、合計62か国がその傘下にあります。
ESCAPでは、地域の経済力強化のためには貿易の円滑化が必須であるとの認識の基に、国によって貿易手続きの効率化等をいち早く実行しているところと、電子貿易や電子手続きに後れをとっているところがあることに対応する政策が採られています。その政策の一つとしてECEと共に、貿易円滑化に関わる国連アジア太平洋電子取引専門家ネットワーク(以降UNNeXT)が組織されました。このメンバーや参加者は主としてアジア太平洋地域の政府・民間・学会から召集され、その目的はそれぞれの専門的な立場から域内の電子貿易推進等に関わる広範囲な提言や支援を行う事にあります。
2011年7月25日〜29日にバンコク(タイ)の国連ビル会議場においてアジア太平洋地域の貿易および投資を振興するための催しがあり、27日に開催された貿易・投資委員会(Committee on Trade and Investment)に先だって25〜26日の間、地域協力体制:貿易データおよび文書の電子交換に関わる地域協定に関わる専門家グループ会議(Expert Group Meeting on Regional Cooperation Mechanisms: Regional Agreement on Electronic Exchange of Trade Data and Documents =以降 EGM)が持たれました。
今回のEGMは、2010年10月にマレーシアで開催された UN/ESCAP Asia-Pacific Trade Facilitation Forum において提起された課題に沿って、アジア太平洋地域の協力体制を、「各国がSingle Windowのような貿易とその手続き業務電子化の仕組みを持ち、それを域内で相互に連携することによって実現しよう」というESCAPの構想につき、UNNeXTのLegal Advisory Group Member とその他の専門家が審議するというものでした。具体的にはESCAPから提示されたUNNExT Guide on Addressing Legal Issues related to Single Window Implementation and Interoperability と題する法的事項に関わるガイドラインの草案と Regional Agreement on e-Trade と題する電子貿易に関わる地域協定の草案に沿って進められました。
現在ESCAPにて更なる検討が進められているところです。
(KW/2011.08.12) → Return to Index